修理する権利:消費者とメーカーに何が変わるのか

スマートフォンや家電などを、これまでより修理しやすく、長く使えるようにする新たなルールが始まりました。その具体的な内容を紹介します。

YOUTH & POLITICSSUSTAINABILITY

8/4/20261 分読む

person holding black phone
person holding black phone

この記事では、2026年からドイツで適用されている法制度について説明します。基礎となるのはEU指令2024/1799ですが、具体的な規則は各EU加盟国の国内法によって定められます。そのため、消費者の権利や適用条件は国によって異なる場合があります。

2026年7月末から、ドイツでは製品の修理を促進する新たなルールが適用されています。対象となる製品のメーカーには、修理サービスの提供、交換部品の長期的な供給、修理費用・期間・条件に関する標準化された情報の提示が求められます。

法定保証期間内の修理も強化されました。故障した製品をすぐに買い替えるのではなく、修理して使い続ける選択肢をより魅力的にすることが目的です。

要点

新たなルールには、次の目的があります。

  • 修理を利用しやすくする

  • 交換部品をより長く供給する

  • 費用や条件に関する情報を分かりやすくする

  • 多くの資源を必要とする製品の使用期間を延ばす

  • 電子廃棄物と不要な資源消費を減らす

どの製品が対象になるのか

現在、主に次の製品が対象です。

  • スマートフォン、タブレット、コードレス電話

  • 洗濯機、洗濯乾燥機、衣類乾燥機

  • 食器洗い機

  • 冷蔵庫、冷凍冷蔵庫

  • テレビ、モニター

  • 掃除機

  • サーバー、一部のデータ保存機器

  • 一部の溶接機器

今後、欧州連合が修理のしやすさや交換部品の供給について新たな基準を定めた場合、対象となる製品が追加される可能性があります。

対象製品の選定には明確な考え方があります。多くの原材料やエネルギー、技術部品を必要とし、大量に使用されている一方で、本来は修理できるにもかかわらず廃棄されることの多い製品が中心です。

すぐに買い替えるのではなく、修理する

スマートフォンのバッテリー性能が低下する、洗濯機が故障する、掃除機が動かなくなる。こうした経験を持つ人は少なくありません。

技術的には修理できても、費用が高い、手続きが複雑、修理サービスを見つけにくいといった問題があります。

交換部品が入手できない、製品の外装が接着されている、メーカーがすでに次のモデルに力を入れているといった事情もあります。そのため、多くの場合、修理より買い替えの方が簡単に見えてしまいます。

新たなルールは、まさにこの問題に対応するものです。対象製品のメーカーは、修理を可能にし、交換部品をより長い期間供給しなければなりません。消費者も、利用できる修理方法や予想される費用を確認しやすくなります。

すべての製品を必ず修理することが目的ではありません。避けられる買い替えを減らし、現在の製品を使い続けやすくすることが狙いです。

長く使うことが政策目標になる

これまでの消費者法は、主に購入、保証、交換を中心に整備されてきました。修理する権利によって、製品の使用期間を延ばすことも重視されるようになります。

欧州連合が2024年に修理する権利を決定した際、中心となったのは交換部品、修理サービス、消費者の権利でした。しかし、この決定の意味はそれだけではありません。

欧州という大きな経済圏が、新製品の販売だけでなく、製品をより長く使うための条件も整え始めたのです。

製品が無期限に使える必要はありません。しかし、耐久性は再び経済、政治、環境に関わる重要な目標になりつつあります。

長く使うことが重要な理由

新しい製品を製造するには、原材料、エネルギー、複雑なサプライチェーンが必要です。

スマートフォンには、世界のさまざまな地域から調達された多くの金属や原材料が使われています。洗濯機にも、鉄鋼、プラスチック、電子部品、製造に必要なエネルギーが投入されています。

製品を必要以上に早く買い替えると、機器だけでなく、そこに使われた資源も失われます。

欧州委員会によると、欧州連合では、まだ使用できる消費財が早期に交換されることで、毎年数百万トンの回避可能な廃棄物が発生しています。

製品をより長く使うことは、原材料を効率的に利用し、廃棄物を減らすことにつながります。

日本から見る「もったいない」

物をできるだけ長く、大切に使うという考え方は新しいものではありません。

日本の「もったいない」という言葉には、資源を大切にし、無駄を避けるという考えが含まれています。物の価値は市場価格だけではありません。そこに使われた原材料、労働、時間にも価値があるという考え方です。

欧州がこの概念を直接取り入れたわけではありません。修理する権利は、主に経済、環境、消費者政策上の目的を持っています。

それでも、使い捨てや単純な買い替えから離れ、現在ある製品をより長く使う方向へ進んでいる点では、共通する部分があります。

修理しやすさがイノベーションの条件になる

これまでイノベーションは、新しい製品や機能を生み出すことと結び付けられることが多くありました。修理する権利は、その考え方を広げます。

次のような製品も、革新的だと評価できるようになります。

  • 開けやすく設計されている

  • 部品を交換できる

  • 交換部品が長期間供給される

  • 修理方法が分かりやすく説明されている

  • 適切な費用で修理できる

修理のしやすさは、製品開発や競争力に関わる要素になります。メーカーは、故障後も製品を使い続けられる設計を、これまで以上に考える必要があります。

まとめ

修理する権利は、単なる新しい消費者ルールではありません。修理サービスを強化し、交換部品を入手しやすくし、耐久性を現代の製品開発における重要な要素にします。

この制度が市場をどこまで変えるのかは、今後数年の動きを見る必要があります。ただし、方向性は明確です。製品は販売されるだけでなく、より長く維持され、使われることが求められています。

出典 欧州議会及び理事会の2024年6月13日付指令(EU)2024/1799「商品の修理促進に関する共通規則」;指令(EU)2024/1799を国内法化する「商品の修理促進法」、ドイツ連邦官報2026年I第212号、2026年7月22日;ドイツ民法典、特に第475e条及び第479a条から第479g条。

会社情報

Léoré Groupは、メディア活動、スタジオサービス、社会的な取り組みを結びつけています。

お問い合わせ

© 2026 Léoré. すべての権利を留保します。

出版物

Léoré Mediaは、社会的意義のある人物、企業、プロジェクトに関するインタビュー、分析、記事を発信しています。
→ Léoré Mediaへ

私たちはドイツ奨学金制度「Deutschlandstipendium」を支援しています